初期の「もの思う葦」から死の直前の「如是我聞」まで、
短い苛烈な生涯の中で綴られた機知と諧謔に富んだアフォリズム・エッセイ49編。
自殺未遂、麻薬中毒、血みどろの苦闘のなかで『晩年』と並行して書かれた『もの思う葦』から、死を賭して文壇大家に捨て身の抗議を行うために『人間失格』と並行して書かれた『如是我聞』まで。太宰治の創作活動の全期間にわたって、天稟の文学的才能と人間的やさしさをきらめかせているアフォリズム、エッセイ『走ラヌ名馬』『かくめい』『酒ぎらい』『川端康成へ』など49編を収録。
【目次】
I
もの思う葦
碧眼托鉢
II
古典龍頭蛇尾
悶悶日記
走ラヌ名馬
音に就いて
思案の敗北
創作余談
「晩年」に就いて
一日の労苦
多頭蛇哲学
答案落第
一歩前進二歩退却
女人創造
鬱屈禍
かすかな声
弱者の糧
男女川と羽左衛門
容貌
或る忠告
一問一答
わが愛好する言葉
芸術ぎらい
純真
一つの約束
返事
政治家と家庭
新しい形の個人主義
小志
かくめい
小説の面白さ
徒党について
III
田舎者
市井喧争
酒ぎらい
自作を語る
五所川原
青森
天狗
春
海
わが半生を語る
「グッド・バイ」作者の言葉
IV
川端康成へ
緒方氏を殺した者
織田君の死
豊島與志雄著『高尾ざんげ』解説
『井伏鱒二選集』後記
V
如是我聞
解説:奥野健男
太宰治(1909-1948)
青森県金木村(現・五所川原市金木町)生れ。本名は津島修治。東大仏文科中退。在学中、非合法運動に関係するが、脱落。酒場の女性と鎌倉の小動崎で心中をはかり、ひとり助かる。1935(昭和10)年、「逆行」が、第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。この頃、パビナール中毒に悩む。1939年、井伏鱒二の世話で石原美知子と結婚、平静をえて「富嶽百景」など多くの佳作を書く。戦後、『斜陽』などで流行作家となるが、『人間失格』を残し山崎富栄と玉川上水で入水自殺。
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